おうち観測所

理系院卒キャリアウーマン、主婦になる。

今日は出産予定日の2日前。そうはいっても、エントロピーが気になる。ブログをはじめる。

妊婦の皆さんは、きたる出産の日までいかに過ごしているのか。

出産に向けて、体を動かしたり部屋を整えて赤ちゃんを向かえる準備に精を出しているというのが私の予想だ。

その妊婦の健気さは想像の中だけでも神秘的である。

 

私も神聖な妊婦らしく部屋を片付けて赤ちゃんを向かえる準備に意気込み始めたが、片づけといえば、エントロピーが気になる。

気になると調べたくなる。

参考文献をあさる。

片づけるという目的を忘れる。

どこにも発表されない調査資料が完成する。

これは、理系院卒キャリアウーマンという経歴を経た代償であると自分を慰める。

決して片づけが苦手なわけではない。本当だ。

調査すべき対象と出会ってしまったという1日だっただけだ。

 

私は、大学・大学院で建築設計と空間デザインについて研究した。

卒業後はゼネコンで建築意匠設計者として5年働き、そこから紆余曲折を経て、晴れて主婦になった。(詳細や経緯は、また別の機会にどこかで。)

そして、出産予定日2日前を迎えたのだ。

 

あーでもない、こーでもないと気になることを調査していた時、ふと思った。

誰にも気づかれないところで、こんなに面白いことを考えて自分なりの結論にまでたどり着いているこの調査資料を黙々と作成している時間は、いったい何の役に立つのか。

誰にも知られない私の為の資料とはなんと不毛な資料であろうか。

私の中で温め続けられ、熟成を通り越して忘れ去られるのみの定めとはなんと切ない。

箱入り娘を量産し、たまっていくのを見て楽しむとは、なんとも悪趣味な気がしてきた。

もちろん部屋も一向に片づいていない。

 

これは、どこかで発表することが私の使命であり、彼女らを輝かせうる唯一の手段なのではないか。

これが、このブログを書きはじめた経緯である。

 

 

ちなみに、エントロピーを知っている主婦は救われる。

閉じたシステムにおいて世界は時間の流れに沿って秩序から無秩序へ向かう。すなわち、エントロピーは時間とともに増大する。

机の上を片付けるのには多大なエネルギーが必要だが、散らかすには何のエネルギーも必要ない。これがエントロピーなのだ。

つまり片付いているということは、片づけた者が多大なエネルギーを駆使して自然の摂理に勝利した褒めるべき状況であるが、散らかっているのはエントロピーのせいなのだ。